石倉小三郎(竹嶺) 崔子玉座右銘
いしくら・こさぶろう(ちくれい)
著作権継承調査中
大阪府翼賛会壮年団団長。

[解読]
無道人之短
無説己之長
施人慎勿念
受施慎勿忘
世誉不足慕
唯仁為紀綱
隠心而後動
謗議庸何傷
無使名過実
守愚聖所臧
在涅貴不緇
曖曖内含光
柔弱生之徒
老氏誡剛強
行行鄙夫志
悠悠故難量
慎言節飲食
知足勝不祥
行之苟有恒
久久自芬芳
右録漢崔子玉座右銘 竹嶺学人
[訓読]
人の
短を
道うこと
無かれ
己の
長を
説くこと
無かれ
人に
施しては
慎みて
念うこと
勿れ
施しを
受けては
慎みて
忘るること
勿れ
世の
誉れは
慕うに
足らず
唯だ
仁のみ
紀綱と
為せ
心に
隠りて
後動く
謗議、
庸何ぞ
傷まん
名をして
実に
過ぎしむること
無かれ
愚を
守るは
聖の
臧する
所なり
涅に
在るも
緇まらざるを
貴ぶ
曖曖として
内に
光を
含む
柔弱は
生の
徒なり
老氏は
剛強を
誡しむ
行行たり
鄙夫の
志
悠悠として
故より
量り
難し
言を
慎しみ
飲食を
節す
足ることを
知りて
不祥に
勝つ
之を
行いて
苟とに
恒有らば
久久にして
自ら
芬芳あらん
右、
漢の
崔子玉の
座右の
銘を
録す
竹嶺学人
[語釈]
仁 思いやりの心で他人との共生を実現すること。
紀綱 根本方針。大綱。
謗議 悪口。
涅 黒い土。
緇む
黒くなる。穢れる。この部分は、『論語』陽貨篇に、「涅而不緇」(涅して緇まず)とあるのによる。
曖曖 薄暗い様子。暗愚な様子。
柔弱 やわらかく、しなやかな様子。『老子』第七十六章に「人之生也柔弱」(人の生まるるや柔弱なり)とある。
徒 仲間。
老氏 老子のこと。
剛強 勇猛なこと。強く勇ましいこと。『老子』第三十六章に「柔弱勝剛強」(柔弱は剛強に勝つ)とある。
行行たり
強情で強硬な様子。『論語』先進篇に「子路、行行如也」(子路は、行行如(こうこうじょ=剛毅な態度)たり)とあるのに基づく。
鄙夫 身分の低い男。
悠悠 ゆったりとした様子。
故より
まことに。
不祥 不幸や災難。
苟とに
ほんとうに。一つ一つしっかりと。この字を「まことに」と読むのは、『文選』注による。
恒 変わらず同じであること。永久不変。
久久 非常に長い年月を経ること。
芬芳 「よい香り」ということから、人徳のことをいう。
[訳]
他人の短所を責めてはいけない。
自分の長所を誇ってはいけない。
他人のために良いことをしても、そのことを恩に着せてはいけない。
自分が他人から良いことをしてもらったときには、いつまでも忘れてはいけない。
世間の名声などは、求める価値がない。
思いやりの心をもっていることが、人間として大事なのだ。
心の中でよく考えてから行動を起こせ。
他人から悪口を言われても、意に介する必要はない。
実力以上の名声を求めてはいけない。
自分は人より優れているなんて思わずに、愚か者の本分に甘んじることを、聖人も良しとしている。
黒い土のような汚い世の中で生活していながらも、自分自身が汚れて黒くならないことが大切だ。
暗愚であっても、自分の中にキラリと光るものを持つ。
やわらかく、しなやかに生きることが、この世を生きるすべだ。
老子も強く勇敢に生きてはいけないと戒めている。
強情で強硬な生き方は、卑しい人のやること。
ゆったりと生きるならば、限りなく可能性は広がってくる。
言葉をつつしみ、暴飲暴食を避ける。
欲望肥大を戒め、災難もしなやかに乗り越える。
以上を一つ一つ常に実行してゆくならば、
長い年月のうちに必ず人徳がそなわってくる。
右は、崔子玉の座右銘を書いたものである。 竹嶺学人
[出展]
崔瑗『座右銘』(『文選』第五十六巻)
崔瑗(さい・えん、字は子玉、78~143)は、東漢時代の政治家・文人。唐代の詩人・白楽天は、この『座右銘』に感動して『続座右銘序』を作り、「崔子玉座右銘、余窃慕之。雖未能尽行、常書屋壁。」(崔子玉の座右銘は、余窃(ひそ)かに之を慕う。未だ尽(ことごと)くは行うこと能(あた)わずと雖ども、常に屋壁に書す。」と言っている。
2009年12月6日公開。2009年12月8日修正。
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