本の内容:
大阪の学問といえば、緒方洪庵先生の「適塾」が有名ですが、最近「懐徳堂」の存在がクローズアップされてきました。本書は、懐徳堂や関係人物についての研究していく上で、基礎的知識を提供するものです。
懐徳堂というのは、大阪の5人の有力町人が出資して作った学校です。開学は、享保9年(1724年)。懐徳堂では、町人・武士などの身分の別に関係なく入門を許し、謝礼も五節句ごとに銀一匁または二匁、貧苦の者は「紙一折、筆一対」でよいという安価なものでした。また、商業を美徳として認めるなど、町人の学校としての特色をもっていました。
懐徳堂は、中井竹山、履軒兄弟のときに最盛期を迎え、多くの人材を輩出して江戸の官学、昌平黌と並び称されるほどになります。町人学者で有名な山片蟠桃も懐徳堂の門人です。漢学研究でも、多くの「懐徳堂版」の出版や、「懐徳堂点」といわれる訓読法の普及など、わが国の漢学に大きな足跡を残しています。しかしその後は、人材難や受講料が安価すぎたこともたたって、次第に衰退し、明治維新をへて、ついに閉鎖を余儀なくされます。
大正5年にいたって、西村天囚ら懐徳堂の再建を願う人びとが協力し、「重建懐徳堂」が完成します。ここでは市民むけに中国文学などが講じられたのですが、これも昭和20年の空襲で、書庫以外は焼け落ちてしまいます。無事だった蔵書は、すべて大阪大学に引き継がれ、懐徳堂の歴史はここに終焉します。
この事典は、懐徳堂の開学から終焉までを、項目に分かって解説したものです。「読む事典」として構成されており、はじめから順に読んでいけば、懐徳堂について一通りの知識をえることができるようになっています。ことに中井竹山、履軒両先生など重要人物については、著書や関連項目のほかエピソードや名言集などまで用意されており、懐徳堂関係の人物を調べる上で、なくてはならない事典であります。
2002年8月31日公開。