本の内容:
本書は、江戸時代初期の藤原惺窩・林羅山以下、昭和2年に没した岡田剣西にいたる漢学者381名の伝記を集めたものです。そのうち、259名分は、『先哲叢談』(正、続、後編)、『近世先哲叢談』(正、続編)を書き下し文にしたものですが、このほかに122名の学者について、伝記や碑文を独自に蒐集しています。私のような明治漢文に興味をもつ者は、この独自に蒐集された部分に千金の価値を感じます。
漢文訓読調で書かれているため、漢文に不慣れな方には少少読みにくいかもしれませんが、漢学者の伝記をくわしく調べるには、無くてはならない本です。もちろん当サイトの作者小伝にも大いに利用させていただいています。
本書の特徴は、蒐集した材料の多寡により、記述に詳略の差があることです。たとえば、佐藤一斎伝は22ページもあるのに対し、菊池三渓伝はわずか5行しかありません。つまり、集めた材料はすべて取り込んで、捨てた部分はほとんどないのだと思われます。本書のおかげで伝記がわかった学者も多くあり、良書を編集された先学の努力に対し、感謝の思いが湧いてきます。
本書は、繰り返し復刻版が出ている名著ですが、これに漏れた多くの学者を加えてさらに充実した「伝記集成」がいまだに無いのは残念なことです。国家事業か大学の事業として、ぜひ作っていただきたいものです。
2003年7月20日公開。