本の内容:
本書は、町人の町である大坂で、町人たちが設立した学校、懐徳堂を中心に、きわめて自由な精神で展開されていた学問の様子を、富永仲基、中井竹山・履軒兄弟、山片蟠桃を中心に描いています。
懐徳堂の学問は朱子学を基本としつつも、歴史、天文、医学など広い範囲で展開していきます。それは自ら真理を見出そうとする学問精神に基づくものでした。その到達点が、山片蟠桃の『夢の代』なのです。山片蟠桃は、升屋の番頭として、当時危機的状況にあった仙台藩の財政を立て直すなど、商人としても天才的な活躍をした人です。蟠桃は商業活動のかたわら、懐徳堂の中井兄弟に師事し、中井兄弟と親しかった大天文学者、麻田剛立からも最新の天文学の知識を得ます。彼の著書『夢の代』は、それらの知識から敷衍された、それまでにない独創的な著作でした。わが国ではじめて地動説を主張したのも『夢の代』です。
しかし、中井兄弟や山片蟠桃の没後、後継者に人材を得なかった懐徳堂は衰微してゆき、時代は洋学一辺倒になってきます。このころ、懐徳堂から100メートルほどのところに緒方洪庵の適塾が作られます。洋学では原書を読みこなすことが中心で、懐徳堂の人びとが追求してきた、自ら真理を追求する態度は、継承されませんでした。かくして自由学問都市としての大坂は終焉を迎えるのです。
2002年8月31日公開。