本の内容:
佐久間象山先生は、漢学に限らず、洋学にも詳しく、西洋砲術等の実学にも当代第一でした。また、アヘン戦争を見て危機感をもち、ペリーが浦賀へ来た時点で明確なナショナリズムを提示できた唯一の思想家でした。幕末という「非常の時」において、しっかりと日本国家の歩むべき道を見通すことのできた「非常の才」をもつ人傑だったのです。本書は、膨大な史料を駆使しながら、象山先生の人物、思想に迫っていきます。
象山先生ははじめ朱子学者として一家をなしますが、蘭学の必要を感ずるや、果然蘭学を学び、たちまち習得するばかりでなく、蘭書にもとづいて各種の実験等を行い、機器を実作します。日本の国の独立を守るには、「夷の術を以って夷を制する」しかないため、それを学び切ろうとしたのです。先生の開国論も「夷の術を以って夷を制する」真の攘夷、すなわちナショナリズムから出たものだったのです。
弟子・吉田松陰の下田踏海(密航)に連座して、十年におよぶ謹慎生活を余儀なくされた中でも、屈することなく国のことを考えつづけた先生は、その後情勢が変わり幕府の招聘に応じて京都へ行き、実際的政治活動に携わろうとした矢先、長州系の刺客団に暗殺されてしまいます。しかし、維新以後わが国の歩んだ道は、すべて象山先生の主張に沿ったものだったのです。
この本を読むと象山先生の「絶代の豪傑」ぶりが伝わってきます。史料に基づきつつ、大胆な推論を下す著者の力量も相当なものです。上下あわせて600ページを超える大冊ですが、あっという間に読めてしまいます。
2002年8月31日公開。